歯科の豆知識
なんと!むし歯菌は感染する?
以前にも少し触れましたが、むし歯菌は生まれたての赤ちゃんにはありません。
「だって赤ちゃんには歯も生えていないし…。」たしかにそうです。
ではなぜ成長するにつれてむし歯になるのでしょうか?
「歯が生えるから!」たしかにそうですが、それよりも、成長とともに超強力な悪玉むし歯菌「ミュータンス菌」が感染しやすくなるからです。
このミュータンス菌、すでにミュータンス菌を持っているお母さんや大人の唾液からうつる菌なのです。
ですから、大人がかみ砕いたものや、口移しで赤ちゃんに食べさせたり、大人がつかったスプーンやお箸で食べさせたりすると、そこからミュータンス菌がうつって強力なむし歯菌として威力を発揮していくのです。
さらにこの菌は、普通のむし歯菌に比べて水に溶けにくく、頑固な汚れになり、酸を大量に長時間出す、かなりの悪玉菌だから困りものです。
だいたい感染しやすいのは1歳半から2歳半くらいの、ちょうど乳歯の奥歯が生えるころです。
しかし、予防の方法を知っていれば感染を防ぐことが可能な菌でもあります。
なので、この時期にしっかりケアをしてミュータンス菌をシャットアウトできれば、むし歯になりくい丈夫な歯を育てることもできるということです。
このことを知っていると知らないとでは、先々のお子様のお口の状態が変わってくると思います。
■歯周病菌は犬からだって感染します。
むし歯と同じく歯周病も唾液によって感染します。歯周病菌に感染した人の菌が子供の口にはいると、歯周病菌は子供の口のなかで繁殖してしまいます。
さらに、ペットから感染することさえあるのです!犬や猫には人の歯周病菌とはちがう、独特の歯周病菌があり、それが感染してしまいます。
しかし、むし歯と違って、感染が始まる年齢が少し高くなり、小学校入学前頃からになります。感染には頻度や密度が問題にもなりますから、ただやみくもに怖がって「唾液がついたら大変だ!」と過敏になりすぎて、赤ちゃんや子供さんとスキンシップをとらなくなるようなことはしないでくださいね。
■菌の特徴として
歯ぐきの上から出てる部分は、自分で行う「セルフケア」が重要になってきますが、
歯ぐきの下、中に発生する菌については、「セルフケア」では取り除けないので歯科医院でしっかりケアする必要があります。
むし歯も歯周病も「細菌」がなければ起こらない「感染症」なのです。ただ、人間は「細菌」と共生しているので、完全に排除することはかなり難しいでしょう。ですが、感染予防は可能です。もちろん、直接的な原因であり、細菌の温床となる歯垢やバイオフィルムを作らせないことが一番の予防です。
しかし、歯の噛み合わせ、歯並び、歯ぎしりの有無、むし歯の詰め物や被せ物の合いが悪くなっているところや炎症の有無など、局所的なリスク要因に加え、生活習慣のなかにも、細菌増殖の原因はあります。
飲食の回数などの食習慣
偏った栄養
喫煙
ストレス
肥満や糖尿病の有無など
全身的リスク要因として間接的に感染症を悪化させることもわかってきています。
■では、具体的にどう予防すればいいのでしょうか?
何よりも、むし歯や歯周病の菌をお口にとどまらせない、繁殖させないことが大切です。
●口からの細菌感染をしないように、気をつけること。
●口の中に糖分や食べかすが長くとどまらないように、間食を減らし、規則正しい食習慣を!
●食事の後にはブラッシングを。
このブラッシングも自己流ではきちんと汚れが取れているかわかりません。歯科で自分に合ったブラッシング方法、口腔ケアの仕方を学ぶことも大切です。夜寝ている間に菌が増殖しやすいですから、寝る前には必ず歯磨きをしましょう。子供さんには「仕上げみがき」を忘れずに!
●栄養をしっかりと取って、良く噛んで食べましょう。
良質の唾液が出て、むし歯や歯周病をはじめとする感染症(インフルエンザなど)の予防にもつながります。
※唾液について詳しくは前のコラムをお読みください
●できるだけ口の中の乾燥を防ぎましょう。
寝る時にマスクをするのも効果があります。さらに、予防治療(定期検診)や、歯科医院でプロが専門の器具をつかって普通の歯磨きでは落とせない細菌をお掃除する「PMTC」や、普段からキシリトールガムなどを噛むようにするのも感染予防につながります。
「細菌」は、「あげない」「もらわない」「増やさない」工夫を!
食習慣について、ご質問等ございましたら、当院に常駐している管理栄養士にお気軽にご相談ください。