歯科の豆知識
糖質オフと糖質ゼロの真実
糖質オフ!糖類ゼロ!
テレビやCMでよく聞きますよね?ところで、みなさんは「糖質=糖類」だと思っていませんか?
いやいや、糖質と糖類にはちゃんと違いがあります。
その違いとはいったい何なのでしょう?
●「糖質」の正体を暴け!
まず、「糖質」とは…炭水化物から食物繊維を除いたものの総称です。デンプンやオリゴ糖などの多糖類、キシリトールやマルチトールなどの糖アルコール、ショ糖(砂糖)やラクトース(乳糖)などの二糖類、グルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)などの単糖類から構成されています。この「糖質」から、三糖類以上の多糖類や糖アルコールなどを除いた、「単糖類」と「二糖類」のことを「糖類」と呼びます。
サッポロHPより抜粋
これを踏まえると、糖類ゼロと書かれていても糖質が含まれていることもありますし、糖質オフでも主に糖類が含まれていることだってあり得ます。
糖質オフと糖類ゼロの2つの表示を併せて記載している食品があるのは、こうした理由があるからなのです。ちなみに「糖質オフ」は食品100gあたり5g以下と定められています。
ところで、数年前までは「糖質制限」ではなく「炭水化物制限」と呼ばれることが多かったですが、どうして呼び方が変わったのでしょうか?
その答えは、食物繊維の存在です。
上の図のとおり、炭水化物には食物繊維が含まれています。食物繊維には整腸作用だけでなく、糖質の吸収を穏やかにし、急激な血糖値の上昇を抑える働きもあり、さまざまな病気を予防するためには欠かせない重要な成分のひとつです。
厚生労働省によりますと、日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い年々低下している現状です。最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり14g前後と推定されています。
「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18g以上、男性21g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めていますから、日本人は日常的に食物繊維不足だということがわかります。
この事実を考慮すると、積極的な炭水化物制限は、さらなる食物繊維不足を助長しかねません。現代病と呼ばれる高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、あくまで「糖」が原因です。
白ご飯やパンなどの主食よりも、お菓子やジュースなどの間食、食卓に並ぶ加工食品の数々…こうした人工的に製造された食品の方がよほど気にすべき「糖」ではないでしょうか。
●「ゼロ表示」って?
次に、ゼロ表示をみていきましょう。
食品成分の表示方法は厳密に定められており、「0(ゼロ)」表示ができるのは、食品100g当たり(100ml当たり)の含有量が0.5g未満の場合です。つまり、含有量が完全にゼロではなくても「0(ゼロ)」の表示は可能なのです。
甘いものが食べたいけど糖分が気になる…という方にとって、こうした食品は強い味方ですが、完全にゼロではないということだけは十分に理解しておく必要があります。
そして、糖質はむし歯に大きく関わる成分でもあります。
特に糖類は最もむし歯になりやすく、その摂取量や摂取頻度によってむし歯のリスクが変動します。糖類はさまざまな食料品に含まれるとても身近な成分ですので、完全に避けることは難しいでしょう。
参考までに、清涼飲料水に含まれる糖分量の一例をあげておきます。
炭酸飲料500ml:40~65g(角砂糖10~16個分相当)
缶コーヒー190ml:2~13.5g(角砂糖1~3個分相当)
スポーツドリンク500ml:20~34g(角砂糖5~8個分相当)
果汁100%ジュース500ml:50~60g(角砂糖12~15個分相当)
こうやって図でみたりすると「うわ~、すごい糖分」と再認識しやすいと思います。健康のためにと果汁100%ジュースを飲む方はむしろ糖分に関しては逆効果と言えるかもしれません。
世界保健機構(WHO)によると、大人1日あたりの砂糖の摂取量は25gまでが望ましいとされているため、これらの飲み物を1本飲むだけでその基準をオーバーしてしまうことになります。
当然むし歯にもなりやすくなりますが、特にスポーツドリンクは、スポーツ時や熱中症対策でこまめに何度も飲まれる方も多いと思います。
この「ちょっと飲み」は非常にむし歯のリスクが高い飲み方なので、余計に注意が必要です。
●虫歯になりにくい糖ってないの?
もちろん、むし歯になりにくい糖も存在しています。
それがキシリトールなどの糖アルコール類です。キシリトールといえばガムというイメージが定着していますが、キシリトールは天然に存在する糖質の一種なのです。
イチゴ、カリフラワー、ラズベリーなどの野菜や果物に含まれていますが、正直なところこれらの食材からむし歯予防に有効な量を毎日摂取することはかなり難しいと思います。
やはり長時間お口の中に作用させるためには、すぐに飲み込まず噛み続けられるガムが一番効果的といえるでしょう。
こうした背景から、キシリトールはガムで摂取するものと広く認識されるようになりました。
最近では、お子さまが飲み込んでも大丈夫なタブレットタイプも発売されています。このような商品を上手に取り入れて、むし歯予防につなげていきましょう。
昨今の糖質制限ブームを受けて、さまざまな企業で糖質の在り方が見直され、自社の製品を改良しています。
みなさんもこれを機にご自身の「糖」生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。