歯科の豆知識
アルコール依存症の健康状態
出会いと別れの季節となりました。
新生活が始まり、心機一転!という方もいらっしゃると思います。
これから温かくなるにつれて、青々しい草木やカラフルな花々も楽しむことができますね。
コロナの影響はまだ続きそうですが、この時期は歓迎会やお花見などで、おいしいお酒を片手に、という光景も増えてくるのではないでしょうか。
酔いつぶれてそのまま寝ちゃって…なんて経験もあると思います。
今回は意外と知られていない、アルコール依存症とお口の中の関係性についてお伝えします。
そもそもアルコールがお口の中にどのような影響を与えるのでしょうか?
以前このコラムでも、アルコールによって歯が溶けてしまう酸蝕症についてお伝えしました。
詳しくはこちらをご覧ください。(え!ホント?ワインで歯が溶ける???)
アルコール以外でも酸性度の強いものをよく口にする人は、酸蝕症のリスクがありますが、アルコールがお口の中に及ぼす影響は他にもあります。
飲み会などでお酒を飲みすぎると、ノドが以上に渇いたり、口の中がネバついたり、歯みがきのときに吐き気がしたりなど、こんな経験をした方も多いのではないでしょうか?
アルコールには利尿作用があります。飲酒によって体内の水分量が不足して、ノドが渇き、お口の中が乾燥状態になります。
また飲みすぎると胃酸の逆流によって気持ち悪くなり、吐き気が起こります。
このようなアルコールによる身体環境の変化が、歯や歯ぐきに大きな影響を与えることになります。
たまに飲みすぎる、というくらいであれば心配いりませんが、問題は過剰なアルコール摂取が続きアルコール依存症に陥ってしまうような場合です。
●アルコール依存症のメカニズム
アルコール依存症とは、お酒の飲み方(飲む量、飲むタイミング、飲む状況)を自分でコントロールできなくなった状態のことをいいます。
アルコール依存症は一部の人が発症するものではなく、実は誰にでも発症する可能性があります。
習慣的な飲酒を続けていると、少しずつアルコールに対する耐性がついていきます。
以前と同じ量では酔えなくなるので、飲む量が次第に増えていきます。
特にストレスや不眠解消のために飲酒をされる人は、酔うために飲酒量が増えやすくなります。
この状態で飲酒を続けていくと、多少生活に支障が出ても気にしなくなり、お酒の飲み方がますますエスカレートしていきます。
こうなると、今まで通りの生活を送ることができなくなって、食事もまともに受けつけなくなります。最終的には死に至ることもあり、覚せい剤などの麻薬の依存性と同じくらい怖い病気なのです。
●アルコール依存症の人の健康状態
通常の生活リズムが崩れ始めると、食生活にもさまざまな影響が出始めます。
お酒主体の生活では、拒食症などの摂食障害と同じような状態に陥るため、免疫力が低下し、身体は徐々に弱っていきます。
また食べ物に含まれる水分も補給できなくなるため、水分不足の状態が持続してしまいます。
これにより、唾液量が不足してお口の中が乾燥し、むし歯や歯周病などを発症しやすくなるのです。
ちなみに唾液がお口の中にもたらす影響については、前回のコラムでも紹介していますので、気になる方はそちらもご覧ください。(唾液は正義の味方だ!)
そもそも歯みがきも正常に行えませんから、お口の衛生状態もかなり悪いです。
むし歯や歯周病が進むと、強い痛みが出たり、歯がグラついたり自然に抜け落ちたりするので、余計に食事をすることが億劫になります。
この状態が続くと、最終的には死んでしまうこともあります。
じゃあお酒を飲まなければいいのでは?と思うかもしれませんが、アルコール依存症の方は体内のアルコール濃度が低下すると、幻覚や手の震えなどのさまざまな症状があらわれます。これを離脱症状といいます。
この不快な離脱症状を避けるために、さらに飲酒を続けることになって、結果的にアルコール依存症に追い打ちをかけてしまうのです。
まさしく薬物依存と同じメカニズムです。
残念ながら、アルコール依存症を劇的に改善させるような治療方法は見つかっていません。
一度、アルコール依存症になってしまったら、もう大好きなお酒を楽しむことはできないのです。
●お酒は飲んでものまれるな
アルコール依存症は、知らず知らずのうちに進行してしまう怖い病気です。
まずはお酒との付き合い方に自覚的になることから始めましょう。
「そういえば最近飲みすぎているな」「2,3日休肝日にするか」そういった自分でアルコールをコントロールする生活を意識してください。
お酒は適量であれば、楽しい時間を演出してくれる素晴らしい飲み物です。
これからも楽しく飲み、おいしく食べ、幸せに一生を終えるためには、お口の健康が欠かせません。
アルコールに意識的になるとともに、ぜひお口の中にも目を向けてみてくださいね。歯やお口の健康は全身の健康にもつながっています。
定期検診をつい忘れてしまうという方には、4月18日は(よい歯の日)をはじめ6月4日(むし歯の日)11月8日(いい歯の日)など、語呂合せを元に歯の保健啓発活動の日が制定されています。その日や、お誕生日など決まった日に受けると便利ですよ。
参考:e-ヘルスネット→アルコールと歯科疾患