歯科の豆知識
口内炎の症状と原因とは?
誰もが一度は経験したことのある口内炎。
気付いたらできていて、いつの間にか治っている、私たちの身近なお口のトラブルです。
口内炎は、口の中やその周辺の粘膜におこる炎症の総称です。頬っぺたの内側にできることが多いですが、唇にできるものは「口唇炎」、口角にできるものは「口角炎」、舌にできるものは「舌炎」と呼ばれ、広い範囲で発生します。
一つだけできることもあれば、何個もできたり、なかなか治りにくかったりと、その症状はさまざまです。
●口内炎の原因
・免疫力の低下
・細菌・ウイルス
・病気・薬
どれか一つでできることもあれば、複数の原因が絡んでいることもあります。
♦免疫力の低下
生活習慣の乱れや偏った食生活、ストレス、加齢などによって免疫力が低下することで発症します。
栄養面では、特にビタミンB群が不足すると口内炎ができやすいとされています。
ビタミンB群は主に代謝に関わる栄養素です。
生活習慣が乱れていたり、精神的ストレスが溜まっていたりすると、疲労や睡眠不足からビタミンB群が不足しやすくなります。
また、普段からコンビニ食や外食が多い方は、十分なビタミンB群を摂取できていない可能性もあります。
♦細菌・ウイルス
お口はいろんな刺激を受けやすい場所です。
飲食、細菌やウイルス、急激な温度変化、歯みがきや異物(歯科治療の材料や入れ歯)、歯ぎしりや食いしばりなど、お口の中の環境は目まぐるしく変化します。
そのため、歯ブラシが当たって粘膜が傷ついたり、熱いものを食べたときにやけどをしたりと、お口の中の傷から細菌やウイルスが侵入して、口内炎につながることもあります。
その他にも、お口の中を清潔に保つ唾液の分泌量も口内炎に関わっています。
口呼吸や加齢によって唾液の分泌量が少なくなると、お口の中が乾燥して、細菌・ウイルスを洗い流せず、口内炎が発症しやすくなります。
♦病気・薬
風邪などの体調不良によってもビタミンB群は消費されるので、口内炎ができやすくなります。また、病気の治療で服用する薬の作用によって、お口の中の細菌バランスが崩れ、口内炎ができやすい環境になってしまうこともあります。
上記のような思い当たる体調不良や薬の服用がない場合に、何度も繰り返す口内炎や様子を見ていてもなかなか治らないときは、何らかの病気が隠れているかもしれません。
●口内炎の種類
大きく分けて4つの種類があります。
◆アフタ性口内炎
見た目:円形または楕円形で白っぽい。
最も一般的な口内炎がこのタイプです。免疫力の低下やストレスなどが原因で発症します。
規則正しい生活と栄養バランスに気を付けて食事をすることが予防につながります。
2週間以内に治ることがほとんどですが、再発を繰り返すこともあります。
◆外傷性口内炎
形状:赤く腫れる。表面がただれる。
歯ブラシや入れ歯などによって粘膜に傷がつくと、傷口から細菌が繁殖して炎症が起こります。
菌が増殖しているので、口臭がすることもあります。
日ごろからお口の中を清潔に保ち、自分に合った歯ブラシなどのケアグッズを使用するようにしましょう。
◆ヘルペス性口内炎
見た目:多数の小さな水疱。
ヘルペスウイルスに感染することで発症します。
乳幼児期に感染することがほとんどで、口の中に多数の水疱ができ、高熱や激しい痛みなどの重い症状が現れることもあります。
他の人に感染させる可能性があるため、医師から外出許可が出るまでは自宅待機を指示されます。
一度感染すると、大人になってからも疲れたときなどに再発しやすいのが特徴です。
◆カンジダ性口内炎
見た目:白くい苔のようなものができる。赤くただれる。
カンジダ菌と呼ばれる、どんな人のお口の中にも生息している細菌が増殖することで発症します。
幅広い年代の方で発症しますが、健康な方が発症することは少なく、抵抗力の下がりやすい
状態の方(糖尿病などの全身疾患と闘病中、抗生物質などの薬を長期間服用中、乳幼児や高齢者など)が発症しやすいとされています。
●知っていますか?見分けのつきにくい「口腔がん」
口腔がんとは、口の中にできるガンのことです。
舌、歯ぐき、口腔底、頬の粘膜、顎の骨など、歯以外の口の中ならどこにでも発生する可能性があります。
特に多いのが「舌」にできる舌癌です。だいたい口腔がんの6割をしめているそうです。
口腔がんの厄介なところは、初期には痛みがないことです。痛みがないがゆえに早期発見できないことがあるからです。
ステージ1なら大きさは2cm以下、深さも5mm以下。
3人に1人が進行したステージ4になってから受診するケースが多いのです。
最近では、タレントさんが舌癌だったことから、その存在を知られるようになりましたが、まだまだ舌や口の中にがんができると知らず、ちょっと痛くてもすぐ治るだろうと安易に考え放置してしまい、重症化するケースが少なくありません。
なんと、日本は世界の先進国に中で、唯一口腔がんの死亡率が増加しているという残念な結果が出ています。日本での口腔がん患者の死亡率はアメリカの1.7倍だそうです。
また、進行した口腔がんは、舌、顎、頬など患部の一部もしくは、大部分を切除し、組織のほかの部分から移植することもあり、術後もリハビリや化学放射線治療などが行われます。
そうなる前に、定期検診で早期発見できれば、切除範囲も少なく、発音や発声に障害が残らず、再発も少なくすみます。
●口腔がんの主な原因
特に刺激が繰り返され、粘膜の細胞に異常がおきていく「慢性的な刺激」が原因になります。
・生活習慣(喫煙、飲酒等)
・歯ならびが悪い、入れ歯の不適合
・むし歯、歯周病、詰め物や被せ物の不適
・舌下帯付着異常(舌の裏の紐のような部分が短い方は要注意)
・金属の詰め物(アマルガム)
・口内炎(10日くらいしても治らない場合は要注意)
・HPV(ウィルス)など
●口内炎と口腔がんの見分け方は?
ここで気になるのが、口内炎と口腔がんの見分け方です。
お口の中がただれたり、腫れたりすると、「あれ?口内炎かな?」と、まず考えると思います。実際、そうであることの方が圧倒的に多いのですが、口腔がんである可能性もゼロではないのです。
境界が明瞭でなかったり、形がいびつであったりと、見分けるポイントはいくつかありますが、素人目で口内炎と口腔がんを正確に見分けることは難しく、非常にリスクが伴います。
一つ言えるとすれば、口腔がんは自然に治ることは決してありません。
口内炎の多くは1、2週間で治ります。それ以上の期間で口内炎が治らない、もしくは、いつもとは違う様子の口内炎を見つけたら、早めに耳鼻・咽頭科もしくは口腔外科のある病院を受診されることをおすすめします。
参考:
Chocola.comあなたのキレイと元気を応援するチョコラドットコム→症状別原因と治し方→痛い口内炎の症状と原因
nico 2019年9月特集いまこそ知りたい!口腔がんp.8~21