歯科の豆知識
妊娠に必要な栄養とは?
生まれてくる新しい命のために、母体の健康は何より大切です。
毎日の食事はお腹の中の子どもの健康に大きく影響を与えます。
妊娠前、妊娠期、授乳中などタイミングによって必要な栄養素量が異なるため、ぜひ一度おさらいしておきましょう。
●妊娠前の栄養
日本人はレンコン型の栄養失調に陥っているといわれています。
見た目上は栄養が足りているように見えても、実際はビタミンや食物繊維などさまざまな栄養素が不足しています。
厚生労働省の報告によると、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など、非常に多くの栄養素の摂取量が少ない状況にあります。
妊娠後に急激に食事を変えることは難しいため、妊娠前からの適切な栄養摂取が望まれます。
特に葉酸は妊娠前から摂取することが推奨されています。
食事から摂れることが望ましいですが、サプリメントを上手に活用するとよいでしょう。
また運動不足にも気を付けなければなりません。
妊娠後は母体が激しく変化します。赤ちゃんが大きくなるにつれてお腹も大きくなっていくだけでなく、食欲が増して体重が増えすぎてしまうこともあります。
人によっては妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの病気を引き起こしてしまうことも。
妊娠前から運動習慣のない方だと、このような体の変化に耐えながら運動することは厳しいので、今のうちから適度な運動をして体重をコントロールする習慣をつけることが大切です。
●妊娠後の栄養
つわりが始まると、食事をするのもままならなくなることもあります。
つわりがひどいときは、無理せず食べられるものを食べるようにしましょう。
もし体の調子がよくて食べられるときには、量よりも質を重視した内容を意識してください。
特に葉酸や鉄などは、普段の食事でも不足しがちな栄養素です。
これらが不足すると、赤ちゃんに重大な影響を与えることになりますので、十分に意識しましょう。
●授乳中の栄養
母乳中心の育児と人工ミルク中心の育児では、必要な栄養素が異なります。
・母乳育児の場合
母乳にはたくさんの栄養が含まれています。
それを補うために十分な栄養を食事から摂る必要があるので、引き続きバランスの取れた食事を続けることが望ましいです。
また、水分補給も食事と同じくらい大切です。
ジュースや刺激の強い飲み物は控え、ぬるめのお茶やお水を飲むようにするとよいでしょう。汁物を食事に加えることも大切です。
・人工ミルク育児の場合
必要な栄養はミルクに含まれているため、母体が必要な栄養は妊娠前と変わりません。妊娠時と同じような食事を続けていると体重が増加してしまうので、早めにいつもの食生活に戻すように心がけましょう。
ただし、半年もたてば離乳食が始まります。
そのときに食生活が乱れていると離乳食作りも大変ですし、味付けが濃いものばかりだと赤ちゃんの味覚にも悪い影響を与えます。
引き続き規則正しく、バランスの取れた食事内容を意識しましょう。
ちなみに、人工ミルクを与える際に使う哺乳瓶の吸い口のかたちも気を付けなければなりません。
本来、赤ちゃんが母乳を吸うときには、舌や口全体の筋肉をフルに使って吸い出す必要があります。
ところが吸い口のかたちによっては、舌を少し当てるだけでミルクが流れ出るものや、一度流れ出すとしばらく止まらないようなものも販売されています。
これだと舌や口の筋肉を使わなくてもミルクが飲めるため、お口全体の発達が進まず、歯並びが悪くなったり口呼吸の原因となったりすることがあります。
哺乳瓶を利用される際は、吸い口のかたちに十分注意してくださいね。
●葉酸が不足するとどうなるの?
ここまで「葉酸」というキーワードがよく出てきましたが、葉酸が不足するとどのような影響があるのでしょうか?
神経管閉鎖障害
神経管とは、脳や脊髄などのもととなる管状の器官です。
この神経管がうまくつくられず、管のかたちにしっかり閉じられないことで、脳や脊髄に影響が出ます。
重篤な場合だと、妊娠の途中で流産してしまうか、無事出産できても数日で亡くなってしまうこともあります。
症状の重さは生まれてからでないとはっきりわからないので、妊娠中からなるべくそのリスクを減らすことが大切です。
●葉酸がたっぷり入った食材
この時期おすすめの食材は、なんと前回に引き続き「ブロッコリー」です!!
ブロッコリーは栄養満点で、毎日でも手軽に取り入れやすい食材です。
焼いてよし、蒸してよし、ゆでてもよし、調理の幅が広がりますね。
ただし、葉酸は水溶性なので、ゆでる場合は注意が必要です。
春はいちご、初夏にかけては枝豆、晩秋からはアボカド、冬はホウレン草がおすすめです。
年中食べられるバナナにも葉酸は含まれているので、果物や野菜をうまく活用して栄養バランスを整えましょう。
またレバーにも葉酸が含まれていますが、ビタミンAの過剰摂取につながる恐れがあります。
たまに食べる分には問題ないですが、習慣化しないように注意しましょう。
監修:たけち歯科クリニック管理栄養士 栗木千明