歯科の豆知識

味覚障害と亜鉛の関係性

新型コロナウイルスがまん延して間もない頃、発症した人の多くが味覚・嗅覚異常を訴えたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

今回はこの味覚障害について詳しくみていきましょう。

 

●どうして起こる??味覚障害

一言に味覚障害といっても、その原因はさまざまで、症状の出方にも違いがあります。

 

味覚障害の原因の例

・加齢

・亜鉛不足

・口腔疾患

・鼻づまりやアレルギー性鼻炎

・糖尿病や腎臓・消化器などの合併症

・薬の副作用

・ストレス など

 

味覚障害の症状の例

・薄味に感じる

・味を感じない

・甘いものを苦いと感じるなど、違う味に感じる

・何も食べていないのに、口の中が苦いと感じる など

 

1つの原因・症状だけでなく、複数の原因・症状が組み合わさっていることもあります。

少しでも当てはまるかも?と思う項目があれば、医療機関を受診しましょう。

 

●実は子どもにも!?

味覚障害はどんなお子さまにも発症する可能性があります。

味覚の発達は3~4歳頃にピークを迎え、その基礎は子どものうちにできあがるといわれています。

この時期に味の濃いものや偏った食材ばかりを食べてしまうと、味覚の発達が促されず、味を認識する力が弱まってしまいます。

その結果、味覚が鈍くなってしまい、味がわからなくなっていきます。

こうしたことを防ぐためにも、小さなお子さまの食事には、ファストフードやジュースなどの味の濃いものはなるべく控えるようにしましょう。

離乳食を始めて大人と同じものがだんだんと食べられるようになってくると、次第に味付けが濃くなりがちですが、大人よりもずっと敏感な味覚をしているので、特に味付けをしなくても食材本来の味だけ十分です。

また、ファストフードやジュースなどの味の濃いものには塩分や油分、糖分などがたくさん含まれています。

こうしたものを完全に断つことは難しいと思いますが、味覚の発達のためだけでなく、お子さまの健康にも大きな影響を与えることになるので、上手な付き合い方をすることが大切です。

 

●歯周病の人は要注意!

歯周病自体が味覚障害の原因ともなりますが、歯周病が糖尿病を悪化させることで、糖尿病の合併症として味覚障害があらわれることもあります。

歯周病、糖尿病を発症している方で、「前と味付けが変わった」と身近な人から言われたり、「なんだか薄味…」と感じる頻度が増えたりした場合は要注意です。

 

●亜鉛不足も味覚に影響

 

 

病気や薬の影響以外で大人が味覚障害を発症する要因の一つに亜鉛不足があります。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では1日の摂取の推奨量は18歳以上の女性で8㎎となっています。

ところが、令和元年国民健康・栄養調査報告によると、20~30代の女性の平均摂取量は7.3mgと下回っており、亜鉛が不足している可能性があります。

数日亜鉛が不足している程度で味覚に影響は出にくいと考えられますが、偏食のある方(特に菜食主義の方)や加工食品中心の食生活の方は、慢性的に亜鉛不足に陥っている可能性があるため、注意が必要です。

 

栄養学に少し興味のある方だと、味覚障害=亜鉛という印象をお持ちかと思います。

実は亜鉛は私たちが生きるうえで、さらに重要な役割を果たしてくれています。

 

●亜鉛が不足すると…?

亜鉛は全身のいたるところに存在しています。

約100種類もの酵素に関わっており、味覚以外にも下記のような非常に多くの重要な役割を担っています。

・免疫機能

・たんぱく質の合成

・傷などの治癒

・DNAの合成

・細胞分裂 など

 

こうした生きていく上で欠かせない役割を担っているにも関わらず、私たちの体には亜鉛を貯蔵しておく機能は備わっていません。

したがって、毎日適切な量の亜鉛を摂取することは、健康的に生きることそのものにつながっていきます。

 

特に菜食主義の方は亜鉛が不足しやすいといわれています。

これは亜鉛が多く含まれる魚介類や肉類を食べる機会が少ないからです。

食環境によって不足が疑われる方は、サプリメントの服用を検討するとよいでしょう。

ただし、亜鉛の摂り過ぎは過剰症につながるため、用法・用量は必ず守ってくださいね。

 

●亜鉛が含まれる食材

 

 

最も多く含まれるのは牡蠣です。

その他にも魚介類や肉類に多く含まれ、海藻類、豆類、ナッツ類からもある程度摂取することが可能です。

牡蠣を毎日食べることは困難なので、さまざまな食材をうまく組み合わせて食べるとよいでしょう。

また、亜鉛の吸収率は約30%とあまり高くありませんが、ビタミンCなどと一緒に食べると吸収率が上がるといわれています。

不足が気になる方は、食べ合わせにも一工夫するといいかもしれません。

 

いかがでしたか?

たかが亜鉛と侮ってしまうと、健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。

まずは味覚に異常がないかを確認し、疑われる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

 

 

 

 

 

監修:たけち歯科クリニック管理栄養士 栗木千明

 

参考:厚生労働省「総合医療」に係る情報発信推進事業部eJIM

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