歯科の豆知識

オーラルフレイルとは?

●フレイルとは?

フレイルという言葉をご存知でしょうか?

フレイルとは「虚弱」を意味します。

運動機能にかかわる大きな病気にかかっていなくても、加齢や筋力の低下によって心身が弱っている状態のことです。

簡単にいうと、健康な状態と要介護状態の中間にあたります。

 

フレイルは大きく3つの種類に分かれます。

  • 身体的フレイル

ロコモティブシンドローム:通称ロコモによって移動速度が低下したり、加齢によって自然と筋肉が衰えたりするなどが代表的な例です。

具体的には、力が出ない、食べられない、動けないなど。

 

  • 精神・心理的フレイル

定年退職や、パートナーを失ったりすることで引き起こされる、うつ状態や軽度の認知症の状態などを指します。

具体的には、何もする気にならない、生活の張りがないなど。

 

  • 社会的フレイル

加齢に伴って社会とのつながりが希薄化することで生じる、独居や経済的困窮の状態などをいいます。

具体的には、人付き合いが少なくなった、一人での食事が増えた、家からあまり出なくなったなど。

 

一般的に「老い」とは身体的な衰えのみをイメージしますが、決して身体の問題だけではなく、これら3つが連鎖していくことで、

老い(自立度の低下)は急速に進んでいきます。

この連鎖の入口がどこになるかは人それぞれ異なります。

 

 

さて、これまでのこのコラムで、全身の健康とお口の中の健康が密接に結びついていると何度かお伝えしてきました。

その根拠の一つに、オーラルフレイルがあります。

 

 

●オーラルフレイルとは?

オーラルフレイルとは、歯・口の機能の虚弱です。

ちょっとした口腔機能の低下や食の偏りなどを含む、身体の衰え(フレイル)の一つです。先ほどフレイルが起こる原因として筋力の低下があるとお伝えしましたが、この筋力の低下にはオーラルフレイルが深く関係している可能性があるということがわかってきたのです。

 

 

お口の健康をおろそかにすると、むし歯や歯周病などで、歯や歯ぐきがダメージを受けます。今までのように噛んだりのみ込んだりすることができず、やわらかいものばかりを食べるようになります。

噛む必要がないと舌を動かすことも少なくなるので、滑舌が悪くなります。

すると、人と話すことが億劫になり、人との交流を避けて家に閉じこもりがちな生活をおくるようになります。

外出の機会が少なくなれば筋力の低下につながり、最終的には生きがいまでも失ってしまうという負の連鎖を招くことになります。

 

このように、一見フレイルとは直接的な関係がないように思われる歯・口の機能の虚弱が発端となって進行していくのです。

したがって、フレイルを予防するためには、オーラルフレイルを予防することが非常に重要なのです。

特に日本人は「歯は悪くなってから治療する」という習慣があるため、積極的に予防治療を受ける方が少ないように感じます。

しかし、ちょっとした予防の積み重ねで「フレイル」や「オーラルフレイル」を防ぐことができるのですから、健康を維持し、自立した暮らしを続けるためにも、ぜひ予防を心がけていただきたいと思います。

 

●もとに戻せる可能性がある?

この「フレイル」とは、健康と機能障害との中間にあり、可逆的であることが大きな特徴の一つです。

可逆的を簡単にいうと「もとに戻れる性質」という意味があります。

ですから、早めに気づいて適切な対応をし、予防することで進行を穏やかにし、健康に過ごせていた状態に戻すことも可能になります。

 

ただ、「オーラルフレイル」の始まりは、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増える、口の乾燥等ほんの些細な症状なので見逃しやすく、気が付きにくいので注意が必要です。だからこそ、定期的な検診が重要になります。

 

 

●予防の柱は3つ

予防で掲げている柱は3つあります。一つは、「栄養」です。次に「身体活動(運動)」。さらに、「社会参加」です。

 

 

 

 

栄養バランスを考えること、しっかり良く噛んで食べることと同時に、お口の健康をキープする。とくにオーラフレイルは、噛む力とも密接に関係していますから、歯周病やむし歯などで歯を失った際には適切な処置を受けることはもちろん、定期的に歯や口の健康状態をかかりつけの歯科医師に診てもらうことが非常に重要です。

また、地域で開催される介護予防事業などさまざまな口腔機能向上のための教室やセミナーなどを活用することも効果的です。

 

運動は特別なことができなくても、なるべく階段を使うようにするとか、できるだけたくさん歩く、軽い筋トレをするなど、日常で続けられる簡単な運動でもいいと思います。

 

社会参加も、大げさに考えるのではなく、家に閉じこもってしまわないように、簡単な地域のボランティアに参加してみたり、美味しいものを食べに行ったりするなど、楽しみを広げてみてください。

 

フレイルに関しては、かかりつけ医次第ではなく、自分次第だということを知っていただきたいです。

さっそく3つの予防方を意識して、実践してみてくださいね。

 

 

 

 

 

 

参考

厚生労働省 集まろう憩いの場 通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル
〈2020年版〉~高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けて~

厚生労働省 健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ

日本歯科医師会 啓発活動 オーラルフレイル