歯科の豆知識

TCH(歯列接触癖)とは?

 

TCH(歯列接触癖)

聞きなれない言葉かと思いますが、この記事を読んでいるあなたもTCHをお持ちかもしれません。
一度ご自分の舌を鏡で見てください。上図のように舌の縁がガタガタしていませんか?

この症状があれば、TCHかもしれません。

 

TCHとは、上下歯列接触癖:Tooth Contacting Habitの略称です。

顎関節症の原因として以前このコラムで紹介していましたので、気になる方はそちらもご覧ください。

 

口を閉じているときでも、上と下の歯にはわずかな隙間があいています。

実際に上下の歯を嚙合わせる時間は、24時間のうちわずか20分程度と言われています。

 

ところがTCHの方は、長時間にわたって上下の歯が噛み合わさっているため、歯やその周りの組織に余計な負担をかけることになります。

 

TCHの主な症状としては、

・むし歯でもないのに歯が痛む

・歯にヒビが入ったり割れたりする

・つめものやかぶせものがよく外れる

・知覚過敏になる

・歯並びが悪くなる

・舌が痛む

・顎関節症になる

・歯周病が進行する

・頭痛やめまいがする

・肩こりがひどい等

お口の中だけでなく、全身にさまざまな影響を与えることがあります。

 

中でも顎関節症はTCHの約8割の人が発症しているといわれています。

TCHのやっかいなところは、すぐに症状が出にくい点にあります。

まずは癖になっている習慣に自覚的になることから始めていきましょう。

 

●TCHになりやすい習慣

TCHは生活習慣が関係しています。

 

パソコンやスマホに夢中になっているときや、少しうつむいた姿勢で何かに集中しているときに起こりやすいとされており、その他にもストレスや緊張なども原因であると考えられています。

食べ物を食べたり飲んだりする機会が多いけど…と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、それはTCHとはまた別の問題ですのであまり気にされなくても問題ないでしょう。

 

・パソコンやスマホなどで長い時間同じ姿勢をとる

・寝転がって本を読んだり動画を視聴したりする

・頬づえをつく

・ストレスをため込みやすい等

 

1つでも当てはまる項目があれば、無意識のうちに上下の歯が噛み合わさっているかもしれません。少し意識して過ごしてみるようにしましょう。

 

TCHの治し方

習慣によって引き起こされるTCHは根本的な原因の解決が難しいとされています。

例えばパソコン作業の多い仕事に従事している方や、緊張感のある現場に身を置くことの多い方など、TCHになりやすい習慣が生活の一部になっていると、それをどうこうすることは困難ですよね。

またそれが変わったからといって絶対にTCHが治るわけでもありません。

自分自身の強い意志で、習慣化されてしまった癖を変える努力をこころがけましょう。

 

例えば、

・毎日回数を決めて、唇を閉じたまま上下の歯を離し、頬の筋肉を脱力させるトレーニングを行う

・職場のパソコンに「上下が噛み合っているよ!リラックス!」などTCHを自覚できるように付箋を貼っておく

・ベッドやソファなどで本を読んだりスマホを触ったりするときは、同じ姿勢にならないように体勢を変えたり、寝転がる癖を見直したりする。

 

こうした小さなことの継続が大切です。

習慣は簡単に変えられるものではありませんが、お金や専用の装置が必要になるものでもありません。

最初は根気がいるかもしれませんが、それもいずれ習慣化されていきます。

ぜひチャレンジしてみてください。

 

●TCHがやめられない!どうしたらいい?

先ほどもお伝えしたように、TCH自体はそれほど負荷のかかるものではありません。

重要なのは、どれだけの時間歯が接触しているか、ということです。

「以前よりも上下の歯が噛み合う時間が少なくなった」

「なんとなく頬の筋肉の力の抜き方がわかってきた」

「集中すると噛み合ってしまうが、すぐに気づけるようになってきた」

このような変化が起きていれば、TCHによるダメージを最小限におさえられているといえるでしょう。

歯は一生使い続ける消耗品です。一度受けたダメージをなかったことにはできませんが、これから受けるダメージを減らすことで、数十年後の歯の寿命に大きな変化をもたらします。

TCHが悪化しないように、長い目で自分の癖と向き合うことが大切です。

 

 

最近では頬の筋肉の力をゆるやかにしてくれる「ボトックス注射」というのもありますから、TCHも歯ぎしりも食いしばりもどうにかしたい!という方はお試しになられてもいいかもしれません。

ただし、メリット・デメリットのあるものですので、必ず医師とよく相談の上、治療を受けるようにしましょう。

 

本日はTCHについてお伝えしてきました。

ストレス社会といわれる現在、歯ぎしり・食いしばり・TCHはもはや国民病といっても過言ではないでしょう。

とはいえ、自分で自分の癖に気付くのはとても難しいので、しばらく歯医者に行っていないという方は、まずは定期健診で自分の歯の状態を知ることから始めてみてください。

実際に「え!私もしているの!?」と驚かれる方もたくさんいらっしゃいます。

今まで気付けなかった無意識の習慣がわかれば、これからいくらでも変えることはできます。

この機会にぜひご自身の癖を振り返ってみてはいかがでしょうか?

 

 

 

参考: 歯のことなら何でもわかるテーマパーク8020  お口の病気と治療 > 歯ぎしり