歯科の豆知識

フッ素とは?

卒業式に入学式。

コロナで止まっていた集団行事がようやく例年通りに復活しそうです。

たくさん笑って泣いて楽しんで、顔をあわせた当たり前のコミュニケーションが一番ですね。

 

最近では、入学式や卒業式に合わせてホワイトニングをされる方も増えてきました。

マスクなし生活に戻る中で、自分の口元を気にする人が多くなったのかもしれません。

見た目を左右する歯の白さも大切ですが、やはりお口の中が健康かどうかは一番重要です。

 

歯の健康といえば、歯みがき。

そして、歯みがきに欠かせないのが、歯みがき粉。

何気なく「フッ素入り」「フッ素配合」のものを選んでいると思いますが、そもそもフッ素にはどんな効果があるのでしょうか?

 

●フッ素とは?

 

 

はじめに化学のお話をしていきましょう。

まず、本来「フッ素」というのは、原子番号9の元素のことを言います。

元素記号は「F」で、学生の頃に「水(H)兵(He)リー(Li)ベ(Be)僕(B、C)の(N、O)船(F、Ne)…」と覚えた方は、この「船(F、Ne)」のFがフッ素です。

元素は他の元素とくっつき、さまざまなかたちで世の中に存在しています。

ここで押さえておきたいポイントは、元素単体と、他の元素がくっついた状態のものとでは、それぞれの持つ効果がまったく異なるということです。

 

例えば、塩素の「Cl」。

 

塩素というと、殺菌作用や漂白作用があって、吸い込むと身体に悪いというイメージがあるのではないでしょうか?

ですが、人間が生きていくうえで欠かせない食材にも、この「Cl」が含まれているのです。

それは、食塩「NaCl」=塩化ナトリウムです

 

 

このように、同じ元素だったとしても、※1化学式が違えばその物質が持つ効果は大きく異なります。

※1物質を元素記号と数字を使って表したもの 例:Cl₂、NaClなど

 

本題のフッ素「F」に戻りましょう。

先ほどと同じく、フッ素もさまざまな元素とくっついた物質が数多く存在しています。

その中に、多くの歯みがき粉に配合されているフッ化ナトリウム「NaF」や、フッ化第一スズ「SnF₂」があります。

私たちが普段、「フッ素」や「フッ化物」と呼んでいるのは、この「NaF」「SnF₂」のことです。

以降、ここではフッ素=「NaF」「SnF₂」とさせていただきます。

 

 

●フッ素は体に良い?悪い?

ここまで解説してきたように、私たちが普段呼んでいる名称と、実際の化学式が異なる場合があります。フッ素も、まさにその影響を受けていると言えます。

塩素「Cl」と同じく、「F」から生まれた物質の中には、毒性の強いものがあります。

特に最近では、有機フッ素化合物=PFASが人や環境を汚染する物質として、世界的に規制され始めているため、その流れでフッ素=危険と認識されているのだと思われます。
水や油をはじくフライパンやひと昔前の消火器も、このPFASの一種です。

余談ですが、PFASは人工的につくられた化学物質で、一度生成されると自然に分解されることはほとんどないとされています。

このようなPFASなど、「F」が含まれる物質には、たしかに危険なものが存在します。

 

では、歯みがき粉のフッ素はどうでしょうか?

 

 

こちらも食塩=NaClと同じことが言えます。

生きていくうえで欠かせない食塩ですが、とり過ぎると腎臓を悪くしたり、高血圧を引き起こしたりしますよね。

フッ素も、用法容量を守っている限りはむし歯を防いでくれる大変ありがたい存在ですが、過剰に摂取してしまうと、歯のフッ素症(斑状歯)などの過剰症を引き起こしてしまいます。

具体的な数値については、日本歯科医師会がWEB上に掲載しています。気になる方はご覧くださいませ。

 

ちなみに、過剰症を引き起こす量がどれくらいかと言うと、6歳前後のお子さんが歯みがき粉1本を一気飲みするようなレベルです。

歯みがき中に誤って歯みがき粉を飲み込む程度であれば、まず心配いりません。とはいえ、小さなお子さんだと、食べ物と間違って多量の歯みがき粉を口にしてしまう可能性があるため、取り扱いには十分お気をつけください。

 

●それでもフッ素が心配なときは?

ハイドロキシアパタイトという成分をご存知でしょうか?

聞きなれない単語ですが、これは骨や歯を構成する主成分と言われています。

・歯垢を吸着する

・歯の再石灰化を促す

・歯の表面の細かな傷を修復する

ハイドロキシアパタイトが含まれた歯みがき粉を使用すると、上記のような効果があるとされ、近年注目を浴びています。

何より、自分の歯や骨と同じ成分ですから、安心して使うことができます。

結果的にフッ素もハイドロキシアパタイトも、お口の健康を守ってくれるありがたい成分ですが、その作用の仕方が異なりますので、併用するのもオススメです。

 

 

もし、「どうしてもフッ素が心配…」という方は、ハイドロキシアパタイトが配合された歯みがき粉を選んでみてはいかがでしょうか?

 

一言にフッ素と言っても、「F」のことなのかPFASのことなのか、指す物質が異なる場合があります。

最近ではネットでいろんな情報を手に入れやすくなっているので、自分が知りたい情報を取捨選択できるようにしてくださいね。

 

 

 

 

 

 

参考:

日本歯科医師会 歯とお口のことならなんでもわかるテーマパーク8020
雑学いろいろ フッ化物 (4)フッ化物適正摂許容量

Nano APAGARD 「ORALPEDIA歯の辞典」から「ハイドロキシアパタイト」

日本小児歯科学会 「PFASと歯科で使用する無機フッ素化合物について」